【一人会社の独学経理術】売掛(うりかけ)帳を書いてみよう

目次


日常的に経理ごとに深く携わってないと売掛(うりかけ)という言葉がパッと思い浮かぶ人はあまりいないのではないかと思います。 少なくとも、門外漢の成り立て一人社長にはあまり聞き馴染みのない単語かも知れません。
しかしながら一人会社の経営者の場合、

『売掛帳(うりかけちょう)』

という帳簿も必ず付けておかないといけない宿命から逃れられないことも事実です。 すぐに必要となることもないこの「売掛帳」ですが、来る日のためにここでしっかりと売掛のことを学習しておきましょう。

そもそも掛取引って?


まずは売掛帳を知る前に、「掛取引(かけとりひき)」に関して触れておきましょう。
よく昭和のムーディーなドラマなどで、行き付けの居酒屋に、常連の客が「今日は持ち合わせが無いから、呑んだ分ツケといてくれ」、というときのソレがまさに『掛取引』です。
有り体にいうと後払いですが、ここでは常連客と居酒屋の間に、後日お金が動く取引が成立しているわけです。 もちろん、そこには常連客と居酒屋の間で十分な

信用

がないといけませんので、掛取引は「信用取引」とも言われます。
またこのとき常連客側からすると『買掛』、居酒屋側からすると『売掛』となります。
この常連の客はサービスを先に受け取って、その代金を払ってないので

買い掛け

、居酒屋はサービスを既に提供したものの、まだその代金を受け取っていないので

売り掛け

、というようです。
ただし、設立仕立ての一人会社は十分な業務実績もないところからスタートしますので、社会的な信用も低いため掛取引する始めのうちは掛取引する機会なんてほとんどないと思われます。

売掛帳


売掛金とは先程も触れましたが、

「まだ支払われていないけど後日回収が見込まれる売上金」

です。
例えば、とある会社Aが原料などの消耗品を月に何回か仕入れて、その代金を翌月末に調達先へ支払うような場合、その調達先の会社Bはまだもらっていない代金を売掛金として「売掛帳」へAとの取引を記帳して残高を管理するようにします。
このように売掛帳をきちんと使うことで、売上代金の回収漏れがないかをチェックすることができます。

以前紹介した預金出納帳

では預金している金融機関ごと・口座別ごとに全て別々の預金出納帳で管理していましたが、売掛帳も考え方が似ていて、

取引先別に売掛帳を作成

しなくてはなりません。
先ほどのB社の例でいうと、A社との掛取引で使う売掛帳、これとは別にC社、D社...と取引先ごとに売掛帳に記帳・管理することが求められます。
ちなみに、今回説明する売掛帳は場合によっては売掛金元帳とか得意先元帳とも呼ばれておりますが、簿記で記帳をしなければならない「補助元帳」の一つです。
補助元帳には着目する取引の種類によって呼び名と用途が変わり、以下のような種類が知られています。

- 売掛金元帳(得意先ごとに1冊)

- 買掛金元帳(仕入先ごとに1冊)

- 商品有高帳(商品の種類ごとに1冊)

- 製品元帳(製品の種類ごとに1冊)

- 材料元帳(原材料ごとに1冊)

- 積送品元帳(送品ごとに1冊)

とくに一人会社の確定申告で必要な補助元帳は、売掛帳(売掛金元帳)と買掛帳(買掛金元帳)です。
買掛帳に関してはまた別の記事で解説してみます。

具体例〜売掛帳を記帳してみる


基本的に売掛帳に記帳するタイミングは、掛取引で売上が成立した時に、仕訳と同時に記帳するようにします。 商品が売れた日付、取引先に請求書を発行した日付で記録しましょう。
また、サブスクリプションなどの月払いのサービスを提供していたり、アフィリエイト型の報酬プログラムに参加していたりと、月に一度の売上が計上されるものも「売掛金」として仕訳できます。 請求書を発行しないような形態の売上は、取引先の〆日に記帳する日付を合わせるやり方が定石のようです。 例えば、アフィリエイトプログラムの場合には報酬の確定する月末日を掛取引の発生した日付として採用することができます。
売上を計上するタイミングの決め方は、会社側が任意で運用ルールを決めることができますが、あまり一貫性がないと税務署から監査されるとき説明に困るとのことですので、一度決めたらブレないように運用する方がいいようです。
さて、以下のような例で売掛帳を記帳してみましょう。

①3/31にA社のアフィリエイトプログラムから確定報酬50000円を得た。

②後日その代金は4/15に、振込手数料500円を差し引いた金額が普通預金口座に入金された。

この例では、①「3/31にアフィリエイト報酬の50000円」の売り上げを売掛金で計上し、その後日、②「4/15に銀行口座振込で代金50000円(手数料込)の入金」で売掛金を回収するという二つの取引を記帳することになります。
まず①の仕訳は以下のようになります。


この場合の勘定科目は「売掛金」になり、手元の資産が増えるとみなせるので、資産勘定の定位置である左側(借方)に記入し、その売掛金の増えた事由となる相手勘定科目を右側(貸方)に追記します。
そして後日②の売掛金を回収の仕訳を

複合仕訳

で追記します。


仕訳のポイントとして、①では売掛金は借方の位置にありましたが、回収され減ったのことで、②では貸方に位置を変更して記入します。
減った事由として借方に「普通預金」の金額を入れます。 このとき振込手数料500円が差し引ひかれて、実際に通帳に記帳されているのは49500円になります。
さらにその下に「支払手数料」の500円の行を追記しています。
これで借方と貸方の金額は一致して、複合仕訳が完結します。
さてこの仕訳を早速、肝心の「売掛帳」に転記すると、以下のようになります。


書き方のポイントとして取引先名(ここではA株式会社)は上中央にくるように書くのが習わしのようです。
取引①の仕訳は素直に借方・貸方の位置を確認して転記するだけですので理解しやすいと思います。
対して、見ての通りで取引②の仕訳では、「普通預金」と「支払手数料」の複数の勘定口座が存在していましたので、そんなとき一行で記帳するためのテクニックである

諸口

を使う必要が出てきます。

会計ソフト上での売掛帳


では先ほどは手動で仕訳帳から売掛帳を転記する場合の話でしたが、これを会計ソフトで帳簿管理すると、仕訳するだけで自動で売掛帳が生成されます。
ここでは

マネーフォワード クラウド会計

でどのような売掛帳が生成されるのかを覗いてみます。

補助科目の作成


売掛帳で取引先を判別するためには、勘定科目だけでなく

補助科目

で取引先名をあらかじめ登録しておく必要があります。
補助科目の登録は簡単で、以下の図のように、

[各種設定] > [勘定科目]

のページで行います。


勘定科目のページの下のツールボックス内にある

[補助科目追加] > 補助科目追加ダイアログ

に移り、ここで勘定科目に

売掛金

、補助科目に

A株式会社

というように登録することができます。
きちんと補助科目を登録しておくことで、仕訳のときにこの補助科目が呼び出し可能になります。
早速、仕訳できるかを確認してみます。 ホーム左側の

[手動で仕訳] > [仕訳帳入力]

のページの最後の空欄行に、先程の内容と同じような掛取引を記帳してみると、売掛金の勘定科目で、補助科目に

A株式会社

が選択できるようになっています。


最後に仕訳が済んだら、売掛帳が出来ているか確認してみましょう。

[会計帳簿] > [補助元帳]

から、勘定科目を

売掛金

、補助科目を

A株式会社

にして検索すると、「A株式会社」の売掛帳が自動生成されていることが分かります。


これでマネーフォワード クラウド会計ベースの売掛帳が記帳できていることになります。

まとめ


今回は売掛帳に関して詳しく解説してみました。
掛取引を行う最大のメリットは、代金精算回数が減るので、一ヶ月間など期間で生じた取引をまとめることが出来て仕訳も一回で済みます。 銀行振込手数料も一回で済むので、手数料をお安くできます。
領収書と請求書の発行もまとめて一回で済むので、それだけ書類の発行作業を圧縮できるのも大きなメリットです。
とはいえ、企業間の直接掛取引となると、企業にある程度の信頼性がないと与信不足で掛取引の対象にもされないかも知れませんので、企業としての実績を積んでからが売掛帳の本領発揮となると思われます。

参考サイト


以下は参考にさせていただいたサイトです。
参考サイト:

掛取引とは?仕訳の具体例と健全な割合を解説


参考サイト:

売掛帳の書き方・売掛金の計上と回収の仕訳


参考サイト:

売掛帳の書き方を記入例付きで解説|最短で売掛帳を作成する方法は?